ニルヴァーナ

 チェケラ!チェケラ!ひゃひゃひゃ!チェケラ!チェケラ!ひゃひゃひゃ!yo!men!ヨウ!メン!ひけけけ!ヒーメン!!今日も今日とてセックスまみれ!今日も今日とて蠕動しきり!今日も今日とてビバ☆ロック!男性間肛門性愛を殊更に好む心理学的肛門期に発達障害を起こした自己色情的婦女のありあまる性的倒錯によりありていに言えば『肺病やみの殺人鬼』としか形容しようのない吐血を得意とする維新志士の如く致命的に聖化され、女の子のありとあらゆる膜から希求される実存であるところの山田でっせ!!
 ま、なんでこんなにテンションが高いかって言うとな、昨日、合コン行ったからやな。うん。サーフィンに行った帰りに。昨日の波は難易度高かったなぁ。もうほとんどギルティギアイグゼクス青シャープリローデッドにおけるソルの画面端でされるダストループ的な、死を免れることが不可避の高さだったしな。台風の影響か?まぁ、そんな中でもサーフィンをするのがロッカーってもんやしな。乗ったよ。波に。セカイに。はっきり言って難易度としては、「月華の剣士2で守矢のする人間の反射速度を超克した凶悪n択を回避する」ぐらいの高難易度やったなぁ。まぁ、その波をな、斬鉄のJAC同時押しによる永久コンボの不条理さでもってして、物理的に不可能な角度で抉ってやったんや!くぅぅ〜〜!見せかたったなぁ、あん時の俺の人間であることを捨てた身姿!ひゃひゃ。おっと話がずれたな。合コンやったな。
 合コンはな、面子としては男2人、女2人で行ったんやな。男は、まぁ、格ゲー仲間やな。年齢やら職業やら果ては正確な名前を尋ねるないことがその擬似格闘的虚構への社会的保身をおざなりにした過剰な没入が齎す社会的劣位により暗黙の了解とされ、その使用キャラ、戦法、戦略、コンボ、理論、ダイアグラムを持ってして個人の自己同一性の統一が図られるという病的な闘争的階層社会の同志達やな。せやから、俺は奴の何も知りへんのや。仮に友人の名前をケンと想定しよう。こいつはすげぇぜぇ?…なんせ、敵の小足を見てから昇竜出せるさかいな!!「そんなことできたらゲームが成り立たんがな!」やて?そうやな。そうなるともう神…やな。でもできてしまうんや。これが。こいつは。サーフィンもするし。 女どもの方はな、なんやっけか……メルティ…セックス?に「シキサマ〜!」とか叫びながら野獣の様で群がってたらしい。「けったいな連中やなぁ何言うとるかわからへんわ」て思うたけど、まぁ受胎に影響はないやろと判断したわけやな俺は。持ちキャラが眼鏡かけとるっつうことしかわからんけどな、ただ、その有様があんまりにもけったいやってもんで。ここでそいつらの様子を笑ったろうちゅう魂胆なんや。んで、以下が合コンの様子ってわけや。途中からやけどな。なんかメンドイし。
 
「(かけている眼鏡を中指であげながら)そういえばぁ、皆さんはどういう音楽聞きますかぁ?私はぁ、中島美嘉なんですけどぉ。キャ!言っちゃた言っちゃった!私って変な娘かなぁ!かなぁ?でも好きなんだもん!仕方ないよね!」 
「(不愉快そうに目を細めて誰にも聴こえないほどの小声で)……狂ったふりの上手いだけのフェイクか…低脳なお前にはお似合いだよ。けけっ(唐突に声を大きくして脳言語野の先天的疾患を思わせる笑顔で)にゃう〜!!!それって、衝撃〜!マコピン、わたしもしゅきだよ〜!あたし達ぃラブラブだねぇ!ずっと一緒にいようね!ずっと友達でいようね!マコピンは本当にいい音楽好きだよね!いいセンスしてるよね!」
「ありがとぉルリルリ!ずっと友達でいてね!(わざとらしく飛びついてみせる)ところでケンさんはぁどんな音楽をき」
「メタリウムサイィィィンン!!(待ってましたとばかりに遮って、両手に握りこぶしを作り人差し指と小指を立たせ頭上に掲げて)」
「え………?(一同、突然の挙動不審に驚く)」
「(全身を小動物がするようにぶるぶる震わせながら)メタルでしょうね。へヴィメタルです。へヴィメタルが最強の音楽に決まってるでしょ!一番強いんです。本当に馬鹿だなぁあんたらは!いじましい国産の音楽の何処に惹かれるっていうのさ?ふん!全然遅漏みたいじゃないですか。ぼ、僕はああいう遅い音楽を聴いても全然、全然エレクトしないんだよね!エレクトしないんです!あ!(一端うつむいて見せて間)…も、もちろん精神的な話ですよ…エレクトッてのは。遅漏なんて全然かっこ悪いよ!あんなの!だって邦楽でしょ!日本で音楽と呼べるものなんて…せ、せ、せ、セックスマシンガンズとXと筋少スピッツぐらいじゃないですかぁ!?はは!はは!脳味噌にまで遅漏が進行したうすら笑いのド白痴らめが!」
「(突然の発狂にギョッとして)お、おい……?ど、どうしたんや?おまえ?大丈夫か?」
「(舌打ちして小さな声で独白)今度は童貞音楽か…ただ速けりゃいいだけの手前勝手の男根主義が…」
「(未知の恐怖に怯えきった子ウサギのように体を痙攣させながら)え、あの…その…え?え、エアロ…スミス?」
「(顔面神経症を手で隠しながら)ま!知らない人はそういうものをメタルとか勘違いしてるだろうね…!最近は深夜のメタル専門番組でもボンジョビやらをメタルって取り上げてるみたいだし。いいんじゃない。全然いいと思うよ。僕は寛容さだけは誰にも負けないと思っているからさ、認めてあげるよ。あれもメタルだって。はん!どうせキミら女は音楽を脳味噌で聞きゃしないんだしさ、子宮で聴くんだしさ!ボンジョビとかああいう一方的な投影しか許さないようなお子様向けの低俗なものでも聞いて、外国人のちんぽにでも頬擦りすればいいさ!ピーチクパーチク囀るだけにしか脳を使えない思考停止のつんぼどもにメタルの神聖な様式美がわかるはずないでしょ!あのキラキラ疾走が理解できるはずないしさ!いつだって真善美は理解しにくい形をしているんだからね。(徐々に尻すぼみになる)速いって、全然かっこいいよ。……全然最強だよ。最強の音楽だよね。遅漏めっ。遅漏どもめっ……」
「(ようやく落ち着きを取り戻し)おい、いいかげんにしとけよ、ちょっと酒の周りが早いんちゃうか?」
「(突然癇癪を起こして)早いって言うなよ!!!!!!早いって言うな!ハイハイ!みんな僕のことをそ、そ、そ、そ、早漏って呼べばいいよ!呼べばいいさ!それでアイアンメイデンのパワースレイヴが名盤でなくなるわけじゃないしね…スレイヤーの狂気のギターソロが消えるわけじゃないしね!第一何が悪い!何が悪いのさ!そ、そ、早漏の何が悪いのさ!!」
「(絶句して)はぁ?」
「(失言に気付き、泣き出して)早漏って言った?ね?今、早漏って言ったよね!早漏って言った!!ね?ね?」
「(堪えきれず腹を抱えながら)……っぷ。くくっっ!!……」
「(開き直って)笑うな!笑うなよ!早漏って、早いって全然かっこいいだろ!手塚治みたいにすぐに子作りできるでしょ!(自分に言い聞かせるように小声で)……全然かっこいいんだ!疾走するんだ……最強なんだ……(徐々に尻すぼみになる)」
「(困惑しながら)…ちょ、ちょっとルリルリ、笑うのは失礼じゃ……」
「(しばらく笑った後、あからさまな悪意の表情で)ああ、ひょっとしてあれですかぁ?私、見ました。前ぇ偶然、インターネットでぇ晒されてた動画があったんですけどぉ、それがすごいおもしろいの。音楽のぉプロモみたいなんですけどぉ、みぃんな鎧着て斧持ってるの。楽器持ってないの。それでね、その鎧着て斧持った筋肉質なコスプレ5人組が野獣みたいな咆哮をあげながら、草むらと森をただただひたすら駆けている様がぁ延々と流されるんですよぉ。途中から何故かとびきりの笑顔で仲良く薪割りし始めちゃうし。私、何か目の前に広がった異常な映像に哲学的ないしは宗教的な気高い崇高な意味があるのかと思ってぇ…今も、何回も何回も脳内で反芻しちゃった!!ッけけ!!…あれってメタルですよね?早かったし。みんな早漏みたいな頭悪そうな獣みたいな動きしてたし…あんま笑わせないでくださいよぉ…っくくッッ!」
「腐れバトルメタルがぁッ!!!気狂いヴァイキングメタルがぁぁぁッ!!(突然立ち上がり)メタルの様式美とキラドコ疾走を、誰があんなリアリティを度外視した『低予算で作られた似非指輪物語をモチーフとしたコスプレ物のVシネマ』としか表現できねぇような陳腐な映像で汚せって言ったぁ!!!!!(ガラス製の灰皿を眼鏡をかけた女の顔面に投げつける。鮮血に染まる店内)ゴミクズがぁぁ!ゴミクソがぁぁぁッ!!蛆糞めがぁぁ!!!」
「おわっ!ちょ、何するんや!ケン!(顔面蒼白であわてて)ひっ!ひっ!いひぃ!!血塗れや!血塗れやぞ!人間噴水やぜ…こいつぁ!!」
「(血で濡れた髪をべったりと頬に張り付かせ、生気の篭らない声で)自我に内面化できぬものを殊更に虚偽と認識し、そのつまらなさが自身のエスのつまらなさであることに無意識裏では自覚的。………過剰投影依存…憎悪対象の投影による転移。それを認めてしまわぬ為に、逃避するようにさらなる激憤に身を委ねる(頭から流れた血が目に伝い、血か涙かわからぬものを目から流す)」
「(興奮した様子で)きゃは。やだぁ、マコピン。貴方の糞頭悪いテンション高いだけの脳味噌付近からでる酸素濃度が異常値を示す血液を垂れ流すのは、店側にとってありていに言って糞迷惑以外の何物でもないのよ?あなたって、前々から気に食わなかったのよね。志貴様への崇拝の仕方、間違ってるし。眼鏡かけてるからって、志貴様に似てるからって調子に乗らないで貰えるかしらぁ。けけけッ。なぁにが中島美嘉じゃあ、ボケェ。こんの小市民のアメリカナイズされた似非日本人がっ。座禅ボーイズやら、銀杏ボーイズやら、ナンバガやら、くるりやら、レイ・ハラカミやら、中村一義やら、ようやく日本の文化と呼べる位置にあるまっとうな音楽を聴いてから日本語吐けや。あ〜あかん、臭せぇ。鼻ひん曲がりそうやわぁ。へヴィメタルの演歌じみたメロディラインよりも臭いんちゃうか?けけっ!脳味噌まで俗悪メディアの影響で膿んどるやつは、血液まで臭いんやな。ええこと知ったわ、こりゃあ。けけけッ。」
「(信じられないといった表情で)ルリルリちゃん…きみは…」
「(あくびを噛み殺しながらビールジョッキを手にして)瑠璃子って呼べや。身の程を知れ、豚。お前はそこらにある軽薄なロックまがいが好きなんやろ。その薄らさぶいだけの関西弁でわかるわ。眼鏡かけてないし。チンポ以外に何も誇るモンのないアホなんやろ。顔文字使って、日本語まともにしゃべれんのやろ。今、アホみたいに血ィ垂れ流しとる雌豚と一緒や。一生友達やて?リストカットしながらか?出会い系登録しながら?知っとるんやぜ…貴方みたいな過酷なセカイと未成熟な自我との圧倒的な齟齬からくる致死的な絶望を、単純な自殺願望に取り違えるような浅薄な人間が欲しがっとるんは、恋人でも友人でもなくって自分を一方的に賛美する人間ってことは。肛門期、さらには口唇期の発達課題を乗り越えきれずに不完全なまま、幼稚なまま育った精神と爛熟だけした身体のギャップを補填してくれる、精薄の奴隷やろうが。賛美者を得る為にますます外装的に、ますます八方美人に、ますます外的自己と内的自己が遊離し、ますます被害妄想的に、ますます精神分裂気味になっていってるのに、気付いてますかぁ?きゃは。求めるが故に崩壊していく自我を、他人とか言う、そんな一時しのぎの、ありあわせの意味無いモンでつぎはぎしようと一生懸命なんですかぁ?そうやって、ある程度自覚的に悪循環に陥ってるのに友達なんてね恋人なんてね!けけッ!無理に決まってんじゃん!貴方みたいな精神病者は一生友達なんてできねぇよ!おまえはどんな価値もないよ。変われやしねぇよ。一度堕ちてしまえば。死んで?意味無いから貴方。しんじゃえ〜!!きゃは!死んじゃえ死んじゃえ〜!きゃは!(ビールジョッキを持ち上げ一気に飲み干す)」
「(握りつぶされたトマト、としか形容できないような頭をもたげながら)貴方が、しばしば迂闊なのは、言葉を信仰しすぎることです瑠璃子
「(瞳孔を収縮させながら向き直り)……ひっ!マコ様……い、生きて…」
「言葉が本質的に無力なのは、それはこのセカイに現出した時点で現実とは致命的に乖離しているからです。言葉はメタ化し、階層化することでしかその力を強固なものにすることができません。(ジョッキを持ち上げ、血と交じり合ったカシスハイに口を付ける)言葉とは最終的に、特異点の向こうに去っていくか、内側に縮潰していくことを宿命付けられた安普請に過ぎないのです」
「(うなだれて無表情で)…はい。軽率でした」
「言葉の造りだす階層化された虚構が、現実を少しも凌駕することのできなくなった貴方達の世代の悲劇はそれは同情すべきものでしょう。それでも、さきほどの貴方のような他人の嗜好を否定するような発言はいただけませんね」
「(うなだれて無表情で)…はい。軽率でした」
「(煙草に火を付けながら)広大なマスメディア網とのリンケージの下で、十万枚、百万枚のメガヒットを単位として形成される瞬間的で巨大なポップ音楽市場。本来的には、メイジャーで巨大なもの、つまりこの国で受け入れられ売れているようなものは総て、すべからく頭から全面的に疑って掛からねばならないのです。貴方は間違っていますよ。瑠璃子アドルノのする叙情的な「否定」の弁証法とは一応区別されるべきだとしても、むしろこれこそ、偉大なマイナー哲学の透視力というものでしょう。そして現代の日本人ほど、マジョリティ集団から逸脱してしまうことを恐れている人間達もいない―――言い切りすぎですか?従って、現在この国でロックとかポップスとか呼ばれている音楽に、日本社会の薄気味悪い共同性からの音のエクリチュールとしての「出口」を見出すことなど土台無理な話であり、むしろそこには「入口」としての音楽があるばかりなのです。そしてこれこそ、カラオケという日本製ジャンク・テクノロジーを通じて全世界に発信されている唯一の日本文化のエッセンスなのです。ロック、ロックと貴方は訳知り顔で声高に叫びますけど、その意味で日本にロックなどという幻想はありはしないのです。私がいつも言うように、日本はヨーロッパ貴族社会に劣等感を抱くような歴史的経緯を経ていませんから、カウンターカルチャーという反動を得る事ができませんでした。その意味で日本において真のロックとは存在し得ませんし、また求められてもいないのです。」
「(うなだれて無表情で)…はい。軽率でした」
「本当に軽率だと思っとんのかこんのエセ文化人が!!(悪鬼の表情で吸っている煙草を飲み込む)私が次のヤニ吸い終えるまでに100回、自らの罪を悔いてみせろ。同じ言葉は許さへんぞ。できへんかったら死刑や。即刻死刑。その死に様が物語として今後100世代分ほどセカイに流布するくらいのどきつい殺しかたしたるさかいな。気ぃいれて懺悔しろな。カカ!」
「(びくつききった強迫症で)ひぃ!ごめんなさいすいませんもうしわけありませんわたしがわるかった……」
「(延々と続く懺悔をバックミュージックに虚空を睨みつけ)もはやセカイにシドヴィシャスやらカートコバーンは求められとらん!いるんは適応する器用さと、女の色気や!借りもんの赤い靴は少し窮屈に決まってる!そんなに退屈が嫌いならな……そのことに早く気づけよ!!!!!」
「(土下座しながらもはや完全な無表情で)知性に不相応な感受性ばかりが肥大化する虚構に合わせて次々と強大化していくのがわかるのです。私の体を蝕む総ての言葉!!…あの地獄と共に忘れたはずの罪!封じたはずの魔!なのに――!」