世界の中心で愛を叫びし獣

 いやぁ、制限を加えるとまったく喋る事が無くなるというのが不思議ですね!へ へ!不思議といえば、ちょっと前に僕の家にある架空請求が届いたんですよ。ね、それがとんでもない傲慢極まる文章で受け取った時は眩暈眩暈の連続でね、あまりの衝撃にその紙を手にとってつがい、僕の家で自分本位にまぐわり合い繁殖しつつあるそれなりに巨大な蛾をおもむろに叩き潰して「けけけっ!見ろよ!こいつ!スペルマで体ができてやがるぜぇ!!鳴り響け!俺の中のナノマシン!!!」と力の無いものに振るう怒涛の快楽に身を浸しながら黒猫の如く叫んだものでした。その僕を侮辱しきった書類の文面は今思い出すのも甚だ遺憾ですけど、確かこんな内容でしたっけ?「かくて陽は沈み、一将功ならずして万骨は枯る。です。電気代のお支払いが3ヶ月ほど滞っているのですが、このままお支払いをされないようでありましたら、私どもは私どもの商業的優位に存在するところの貴方様の文化的生活レベルを資本主義という冷酷なしかし不可避の一撃でもって弑し奉らなければなりません。」っていうね。これはもう架空請求なんて生温い…脅迫状ですよ。脅迫でしょう。涙と劣情と自己憐憫の錯綜する地獄のような穏やかさが僕の体を脊髄反射的に駆け巡り、「なにもかも、恐ろしく簡単で醜悪だ!醜悪だよ…インポめ!インポどもめっ!」という一個人の苛立ち紛れの呟きも徐々に感情に攪拌され震え、その震えはやがて体全体に伝播いたしました。本当に赦せないし、かっこわるいですよね。こういうの。こういうのって凄くかっこわるいなって、思うんですよね。ね?ね?でしょう!!全然僕が悪いわけじゃないですからね!ああ、セカイはこんなにも壊れやすい!あっ…
 違うんですよ。違います。これは昨日、世界の中心で愛を叫ぶ獣?でしたっけ?ああ、獣は余計?ふむ…。ふむ……。しかしですね、あれは立派な獣でしたよ?ジョヴォーダンの獣も真っ青なね。社会的、経済的観念の欠如した青年が、余命いくばくも許されぬ白血病患者をその獣のごとき自分も見えぬような傲慢さで引きずりまわし、ありていにいえば殺害に至らしめる。そこで一定の社会集団ないしは解決手段をもつ一個人ではなく世界に対して絶望の嘆きをしたたかに叫んで見せるシーンは、なるほどなるほど。圧巻でありましたよ。まったく抽象的に、メタ的に、メタメタメタメタ進んでいく後半部分は絶舌ものでした。特にお気に入りなのが主人公の男が「世界の中心がどこにあるのか……わかった気がした」と精神病棟のうめきに酷似した世迷いごとを呟くシーンは、あれはつまりそういうことなんですよね?現代人の留まることを知らぬ自意識の肥大を皮肉った発言という体で受け取ってもよろしいのでしょうか?実は僕は世界の中心にずっといましたよ、ということでよろしいのでしょうか?僕は僕の傲慢さを許容する、という主旨と解してもよろしいのでしょうか?僕にはわからないんだディリータ。僕にはわからない。ディリータってセーフですよね?FFTに出てきた。え、そりゃあ違いますよ。だってFFTですもの。FFじゃあありませんもの!
 いやぁ、マジで書く事が無いアンリミテッドブレードワークスというかね。あっ…。
今日はそういえば、あれを取りに行きました。成績表。今年卒業できるかできないかの瀬戸際なので手がブルブルと震え、目は瞳孔を開きながら成績表に釘付けになり、ピノキオみたいに無表情で歩いているところをサークルの後輩2人にいぶかしげに挨拶されて、僕は何故か「はいぃぃぃ!!なんでございましょうかぁぁ!!」と中世の騎士に使える従者のような卑屈さで応答してしまいました。でもよかった。単位取れていましたよ。きちんと。後はスペイン語と卒論だけです。スペイン語。…は?……何か文句でも…あるんですか?…?悪かったですね…。悪かったなぁ…。まだ取ってませんよ!外国語!まだ取っていませんよ!